BOSS BF-2 フランジャ
BF-2 は息の長い機械だったように思う。前身のBF-1はもっとごつい筐体で、現行のBOSS筐体とは違うフォームファクタである。BF-3は2002年ぐらいのNAMM Trade Showで発表になっていたような気もするので、BF-1とBF-3の間を勤めたBF-2 もゆうに20年選手かな、と。ちなみにBF-3はそれまでのものと構成が大きく異なるようだ :-)
コーラス、フランジャ、ディレイが似ているとMAXON CS-505 コーラスの回に書いた。ここではBBDでどのように信号を遅らせるのか説明する。BBD素子には信号入力と信号出力とクロック入力の端子がある。クロックパルスが立ったときに、信号入力に来ている信号の電圧がBBD内部のコンデンサに保持される。BBD内部はコンデンサがずらっ(512個とか1024個とか4096個とか)と並んでいて、クロックパルスにあわせて一斉に左から右へ(いや右から左かも、とにかく入力から出力に向かって)、コンデンサに蓄えられている電荷をわさわさわさと移動する。電圧が一段一段コピーされる。これでどれぐらいの量を遅延させることができるかは、BBDの段数とクロックパルスの周波数に拠る。コンデンサが1024個並んでいる1024段のBBDで、64kHz (時間にすると 1/64k≒15.6μsec) のクロックパルスを入れると、入力が出力に現われるまでには、1/64k * 1024 = 16msec の時間がかかって、信号が遅れることになるわけだ。 入力信号はクロックパルスの立っているときに取り込まれる。立っていないときは取り込まれない。もともと入力信号は時間的に連続したものなのだが、BBDには時間的に離散的に取り込まれる。サンプリングされるのである。アナログ・コーラス、アナログ・フランジャ、アナログ・ディレイ というけれども、BBDを使う限りは時間方向には離散的な系を通っている。遅延部分に関しては一度ディジタル化しているようなものだ(もちろん振幅方向には連続量のままではある)。だから入力信号と出力信号の間はサンプリング定理に縛られる。その縛りの中で不用なノイズや歪みを避けるために、BBDの前後にローパスフィルタを配置しているのである。ときどきクロックのパルス性ノイズが信号経路に紛れ込むことがあって、制御信号のはずのクロックの音がジーとかピーとかキーとか聞こえることがある。クロックの漏れと呼んだりするのだが、前回のMAXON CS-505ではゲートを設けて漏れ音の聞こえを少なくしていた。
さて BF-2 である。BBDにはMN3207が用いられていた。これは電源電圧がMN3007よりも低いもので、コンパクトエフェクタで一般的な+9V電源でも利用可能である。BBDは+5.6Vぐらいで、アンプ部分は+9Vで動かしていた。実は回路自体は良くあるフランジャの回路で、AMDEKのFLK-100も同じ回路だったんじゃないかなぁ。
いつもどおり双安定マルチバイブレータによるon/off回路は別に付加したものに切り替えてある。コントロールが4つ (Rate/Depth/Resonance/Manual) あるので配線が面倒だ。DepthのVRが若干ガリオーム気味だったのと前作業者がレジストを剥がしていた部分が筆者の作業でショートしてしまい、ケースに入れると効かなくなる、というトラブルに見舞われた。絶縁して直して完了。
子供の頃のエフェクタ遍歴として、ギターを始めてまずディストーションを作った。その次にコンプレッサを作ったが失敗してブースタとして使用して、次に入手したのがフランジャ、BOSSの BF-2 だった。コーラスがわりに使うこともあったが、やっぱり歪みモノと併用でジェットサウンド。これに尽きますねぇ。
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